TVドラマ『グッド・ドクター』に思うこと

・そんな医者いない!

フジテレビ系で平成30年7月13日から放送されている『グッド・ドクター』を妻が観ていたので、しばらく私も観ることにしました。

これが結構、心に響くものがあって興味をひかれたものの、多少の違和感も感じたのです。

固有名詞をあげても観た人でないと分からないのですが、横紋筋肉腫で入院しているマサキ君という患者がいました。

そのマサキ君の主治医が、偉いさんをゴルフ接待しているところに、病院からマサキ君の病態が変化したと電話がかかってきます。

主治医は大した問題ではないと、接待ゴルフをきり上げようとはしません。電話してきた部下の医師をあしらってしまったのです。

主治医の出張中や休みの日に、患者さんについて電話がかかってくるというのはよほどのことがあってのことです。

それを、大した問題ではないとあしらってしまうことなどあり得ないことです。

今後のストーリー展開や、そのドラマでの役割からそのような脚本となったのかもしれません。

しかし、これは小児外科、いえ医療の現場を全く反映していない脚色ではないでしょうか?

・「自閉症」という言葉の使い方に「?」

新しい診断基準では、自閉症と高機能自閉症やアスペルガー症候群が、1つの病態体系として「自閉症スペクトラム症」もしくは「自閉症スペクトラム障害」という概念に統合されるようになりました。

自閉症スペクトラム症を含む発達障害を、個性の1つであるという考え方が主流となっていることの表れかも知れません。

こういった新しい分類がなされる前には、知能の発達に遅れのある自閉症圏の病態を「自閉症」、遅れのないものを「高機能自閉症やアスペルガー症候群」としていたのです。

ドラマの劇中、多くの医師が主人公の新堂湊医師を「自閉症」「自閉症」とさげすむようなニュアンスで発言していることにも違和感を感じました。

医師であるなら、ふつうは「自閉症」ではなく自閉症スペクトラム症Autism Spectrum Disorderの略である「ASD」と表現すると思うのですが…

シナリオライターが意図的に「自閉症」という言葉をつかうようにしたのでしょうか?あまりに侮蔑的に「自閉症」という言葉をつかっているのは感心しません。

・自閉症スペクトラム症の描写が「?」

新堂湊医師を演じる山崎賢人さんの演技は、実際の自閉症スペクトラム症の方と実際にお会いになられて(動画を観たのかも知れませんが…)研究したような感じで、非常によく特徴をつかまれているような印象でした。

しかしここに「ただし」という但し書きが入ります。

山崎賢人さんが演じる自閉症スペクトラム症の演技は、古い分類でいうところの「高機能自閉症やアスペルガー症候群」の行動様態ではないように思われました。

彼が演じるのは、旧分類で「自閉症」と診断されるような方々のうち、「サヴァン症候群」という並はずれた記憶能力を持つけれど、知能に障害をともなう人の行動様態ではないでしょうか。違和感を感じます。

『レインマン』でダスティ・ホフマンが同様の病態の方の役を演じたときには、これほどの違和感を感じませんでした。設定が大いに違っているからでしょうか。

それはともかく、自閉症スペクトラム症のご家族が、このドラマを観て、どのような印象を持つのか、ちょっと心配な気がします。

今後のストーリー展開が、自閉症スペクトラム症の方々や、そのご家族がこころ穏やかにいられるものであることを願ってやみません。

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