もくじ
大崎事件の再審判断の経過(地裁・高裁)
再審は地方裁判所と高等裁判所で認められています。
地裁の再審開始決定(2017年6月)での根拠は、原口さんが殺害を共犯者に持ち掛けるのを見たと証言した検察側証人の供述を心理的に分析した鑑定を採用して、共犯者の自白に信用性がないとして再審が認められました。
高裁の再審開始決定( 2018年3月 )は、上記の心理鑑定を不合理としたものの、転落による出血死の可能性を指摘した法医学鑑定の判断を採用してのものでした。
最高裁の再審却下という判断の理由は?
弁護側の法医学鑑定書は証拠能力が不十分
- 弁護側が提出した法医学鑑定書は、腐敗が進んがご遺体の写真による判断であり、限定的な情報誌に基づいた判断によるものである。
- 死因を認定する証明としては十分ではない。
- 高裁の再審開始決定は、この法医学的鑑定を根拠としており、不合理である。
私見!
法医学の鑑定が、写真のみで行われているのであれば、科学的根拠に乏しいと言わざるを得ません。
この鑑定を根拠に、高裁が再審を決定したことは確かに問題があるといえるのではないでしょうか。
ニュースで「高裁の再審決定を覆す!」ということを知った時には、最高裁判所はなんと不条理な判断をするのかと頭に来ました。
しかし、新聞などで再審却下の理由を読んでみると、論理的には最高裁の判断は妥当なものであるようです。
しかし、以下に書いたように共犯者の自白については違う考えを持っています。
心理鑑定は証拠として不十分
心理学者の分析は、確実に信頼できるものではない。
私見!
心理学的鑑定は客観的根拠に基づく科学的判断か?という点について問題が多いと思います。
病気であるか否かとの鑑定とは異なり、心理的にどうであったかという鑑定の証拠能力は極めて問題を残すものであると考えます。
この点では、最高裁の心理鑑定に対する判断は納得できるものです。
共犯者の自白は信用できるか?
最高裁の判断
共犯者の自白や証言の信用性は相応に強固であるとしています。
私見!
40年前の取り調べで、警察検察の誘導的尋問が行われていた可能性があり、これを信頼に足るものとするには疑問が残ります。
これを「信用性は相応に強固」としたのは、実際の尋問場面を確認できていないため明言はできないものの、当時の取り調べが正当なものであったかには疑問が残ると思っています。
大崎事件の再審に関する最高裁の判断は正当か?
最初のニュースを聞いた時とはことなり、法を守る最後の砦としての最高裁の役割を考えるならば、今回の最高裁判断は妥当なものであるといえるのではないでしょうか?
もっとも、自白の信ぴょう性については疑問が残り、新しい客観的証拠を弁護側が探し出すことができて、92歳にもなっている原口アヤ子さんの無実が、生きているうちの晴らせることを祈るばかりです。