コーヒーを眠気を覚ますために飲む人は多いと思います。
コーヒーにはカフェインが多く含まれていて、このカフェインに眠気を覚ます作用があるのだということも広く知られていることですね。
ところがカフェインを飲んだあとに、不都合な現象が現れることがあります。
その不都合な現象の1つが「カフェインクラッシュ」です。
もくじ
・カフェインクラッシュ」とは?
カフェインクラッシュとは、カフェインを多く含んだ飲み物やサプリメントなどをある程度以上たくさん飲んだあとに生じる、
「激しい疲労感」「高度の集中力低下」「イライラ」「眠気や居眠り」が生じるという現象です。
普通はカフェインを飲んでから数時間後に起こるようです。
とくにカフェインを飲む前の状態が、睡眠不足であったり疲れていたりするときに生じることが多いとされています。
・カフェインクラッシュはなぜ起こるのか?
簡単にいえば、カフェイン切れですね。
覚醒作用や疲労感の軽減作用のあるカフェインが切れてくるので、眠気や疲労感を感じるようになるということになります。
しかし、カフェインが切れて、その効果がなくなってくれば、カフェインを飲む前と同じ程度の状態になるだけではないか?という疑問が湧いてきます。
実はカフェインの覚醒作用や疲労感の軽減作用は、カフェインが直接に作用するのではないことがポイントなのです。
・なぜカフェインが眠気や疲労感の軽減に効果があるのか?
アデノシンという物質が、眠らないで長く起きていたり頭を長く使っていると脳細胞の外側で増えてきます。
このアデノシンが眠気(1)や疲労感(2)を感じさせるのです。
カフェインの効果は、アデノシンという体内物質がアデノシン受容体にくっつくことをカフェインがブロックすることで発揮されます。
その為カフェインで眠気や疲労感が改善されるのです。
・アデノシンの役割と活性酸素
起きているとか頭をつかうとかすると、脳はエネルギーを消費します。
エネルギーは細胞内のミトコンドリアというところで、呼吸から取り入れられた酸素を利用してATPから産生されます。
しかし、エネルギーと同時に活性酸素も生み出されるのです。
活性酸素はミトコンドリア自体をを傷つけ、傷ついたミトコンドリアは健康なミトコンドリアよりも多くの活性酸素を発生させます。
そして、それがまたミトコンドリアを傷つけることになります。
つまりミトコンドリアを傷つける悪循環が生じて、ミトコンドリアはエネルギーを産生することができにくくなるということですね(3)。
このような状態が細胞の老化とうことになります。
しかし、老化という長い年月を経なくても、細胞も使い過ぎて休ませないと活性酸素で傷つくことになるのは間違いいありません。
例えば脳であれば、アデノシンという物質が脳内に増えて、それがアデノシン受容体という部位にくっつくことで、脳細胞を休ませるように働きます。
こういったメカニズムにより、人は眠気や疲労感を感じることになるのです。
・カフェインクラッシュの正体
先に述べたように、カフェインはアデノシンがアデノシン受容体にくっつくのをブロックすることで、脳内でアデノシンが増えてきても眠気や疲労感を感じなくさせます。
ところが、意識の上では眠気や疲れは感じにくいものの、エネルギーはどんどん使われているので、体は「休め!」の信号であるアデノシンを作り続けることになります。
アデノシンが溜まってくるということです。
カフェインが切れてくるときには、アデノシンはカフェインを飲む前よりも増えているので、カフェイン切れとともに一気に眠気や疲労感に襲われることになります。
これがカフェインクラッシュの正体です。
・カフェインクラッシュを防ぐ方法!
では、どうやればカフェインクラッシュを防ぐことができるでしょうか?
University of Central FloridaのAdam M Gonzalez et alらは、通常のカフェインカプセルを服用するよりも、徐放性のカプセルを服用した方が、カフェインクラッシュを少なくすることができると結論しています(4)。
この論文に従えば、カフェインを含む飲み物を摂取するときには、少量ずつ、時間をあけて飲むようにするということが、カフェインクラッシュを起こさないようにする飲みかたであると言えるでしょう。
中等度から大量のカフェインの摂取は、カフェインクラッシュを引き起こす可能性があるので注意しましょう!
・参考文献
(1)TarjaPorkka-Heiskanen.Adenosine and sleep.Sleep Medicine Reviews.Vol6, Issue4, July 2002,P321-332.
(2)Davis JM et al.Central nervous system effects of caffeine and adenosine on fatigue.Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2003 Feb;284(2):R399-404.
(3)https://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/aging/doc3/doc3-03-1.html
(4)Pharmacokinetics of caffeine administered in a time-release versus regular tablet form. J Int Soc Sports Nutr. 2014; 11(Suppl 1): P23.